大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成10年(レ)53号 判決 1998年7月06日

控訴人 国民金融公庫

右代表者総裁 尾崎護

右訴訟代理人 A

右訴訟代理人弁護士 桑原収

同 小山晴樹

同 渡辺実

同 堀内幸夫

同 青山正喜

被控訴人 シンコーシステム販売株式会社

右代表者代表清算人 B

主文

一  原判決を取り消す。

二  控訴人の被控訴人に対する昭和五六年七月三一日付金銭消費貸借契約に基づく貸金一五〇万円について、被控訴人は控訴人に対し残元金八万七〇〇〇円、未払利息金八一五一円、未払遅延損害金二〇一万五三〇一円及び残元金に対する平成一〇年三月七日から支払済みに至るまで年一四・五パーセント(年に満たない端数期間については一日〇・〇四パーセント)の割合による遅延損害金の各債務を負担していることを確認する。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  控訴人は、主文と同旨の判決を求め、原判決の別紙「請求の原因」<省略>(ただし、三項を「本件和解で存在が確認された貸金債権については、平成四年一〇月二〇日に被告から二〇〇〇円が支払われたのを最後に弁済がなく、右債権は消滅時効の完成により消滅するおそれがあるので、その中断を図るため右債権が存在することの確認を求める必要がある。」と訂正する。)のとおり主張した。

二  被控訴人は、適式な呼出しを受けながら原審、当審を通じて本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面を提出しない。したがって、被控訴人において請求原因事実を明らかに争わないものとして、これを自白したものとみなす。

三  なお、原判決は、本件貸金債権については、平成四年一〇月二〇日の弁済による時効中断後、新たに一〇年間の時効期間が進行を開始するから、時効完成までには原審口頭弁論終結時から約四年半以上の期間があるので、本件訴えは時効中断のためには早期に過ぎ、確認の利益を認めることができない旨判示する。

しかし、弁論の全趣旨によると、控訴人は、裁判上の和解によって確定した権利の時効期間は一〇年間に延長されるものの(民法一七四条ノ二第一項)、後に右権利が時効中断した場合にも、その後の時効期間が一〇年間となるのか、それとも本来の五年間の短期消滅時効期間に戻るのかは民法一七四条ノ二の規定からは明らかではないので、右時効期間が五年間と解釈されることを慮って、本件訴えを提起したことが認められる。そして、右のような見地から、本件貸金債権が消滅時効にかかるのを防ぐために訴えを提起することは、債権管理のあり方として相当の理由があるものというべきであるから、控訴人の本件訴えについては訴えの利益が存するものと認められる。

四  以上のとおりであるから、民事訴訟法三〇七条ただし書により、右判断と異なる原判決を取り消したうえ、控訴人の本訴請求を認容することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法六七条二項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 梶村太市 裁判官 石井浩 大寄久)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例